冬になると胃腸炎の患者さんが増え、「ノロウイルスが心配」という声が聞かれます。特に飲食店勤務だったりすると、感染力が強いため気にされて来院される方も少なくありません。
今回はノロウイルス感染症についてまとめてみましたので、おなかを壊して「どうしよう??」となっている方などは是非参考にしてください。
どうやって感染するの?
ノロウイルスを口から取り込むことで感染します。
食品では生牡蠣に潜むことが多く、典型例とされます。
また発症者の嘔吐物・糞便中にも最長数週間にわたってウイルスがいるため、感染者が使用したトイレのドアノブに付着していたり、トイレを流した勢いで空気中にノロウイルスを含む粒子が舞うことで、これを吸い込んだ人が感染する可能性があるとされています。
潜伏期間は?
通常12~72時間程度とされていますが、概ね24時間前後が多いかと思います。
症状が出てきたら、その1~2日前に感染の原因となるイベントがなかったか思い出してください。
症状の特徴は?
嘔吐、下痢、発熱と他の胃腸炎と違いはありません。
しかし嘔気、下痢症状の程度が他の胃腸炎を比べてやや強い傾向があります。
ノロウイルスの診断は?
臨床診断といって摂食歴と症状などからある程度は想定可能です。
検査をして欲しい、という場合は迅速診断キットを用いますが、
以外の方は保険適応外なので自費での検査となります。
最近話題のPCR検査等も存在はしますが、検査結果が出るころには症状が軽快していることが多いので通常は行う意味はないと思います。
ノロウイルスの治療は?
残念ながら今のところ直接的な治療方法はありません。
ノロウイルスはその名の通りウイルスです。そのため細菌感染症で効果を発揮する抗生剤は無効で、むしろ腸内のいい菌を殺してしまうことで、回復を遅らせてしまう可能性があるのです。
唯一できることであり、効果的なのは大量に水分を接種することです。これにより排便量が増え、腸管内のノロウイルスを排出することができます。
また脱水が改善することで、自身の免疫力が増強される効果も期待できます。水分は脱水を促進するカフェインを含まないものであること、電解質を含むことが重要であり、スポーツドリンクがお勧めです。
おそらく通常の食事は摂取できない状態かと思いますので、スポーツドリンクを多少多く飲んでも糖分の取りすぎになることはないでしょう。
またノロウイルスによる下痢に対しての止痢薬(下痢止め)使用に関しては、その是非が分かれています。(ノロウイルスは十二指腸から上部小腸の感染のため大腸の運動を止めても変わらない、という意見もある)
ただ個人的にはウイルスの排出遅延を招く可能性があるため、止痢薬の使用はやめておいた方が無難かと思います。
どのくらいで治るの?
通常1~2日程度で症状は自然治癒します。
ただし経口摂取ができない状態が続くと脱水状態となるため、小児や高齢者は経口摂取ができない状態が続くようなら点滴が可能な医療機関を受診するようにしてください。
いつまで人にうつすの?
症状消失後から1月程度糞便中にウイルスが排出されています。
数十から数百のウイルスが口に入るだけで感染が成立するといわれるため、しばらくは注意が必要です。
消毒は有効?
手指は大量の水で洗浄することでウイルスを洗い流すことができます。
一方でアルコール消毒や石鹸には耐性があり、室内設備の除菌を行う場合は次亜塩素酸が有効です。
予防法は?
個人でできることは非加熱処理の牡蠣を食べないこと
これに尽きるでしょう。
残念ながらワクチンも存在せず、一度かかってもその免疫はあまり長く持ちません。大事な予定の前には生牡蠣を避けるようにしましょう。
また周囲で嘔吐をした人がいた際は換気すること、処置を行う人はマスクをし、処置後はしっかり手洗いを行うことが重要です。
まとめ
ノロウイルス感染症といっても胃腸炎には変わりありません。病院に行っても出来ることは点滴することと、吐き気止めを使用するくらいで、劇的な改善が望めるわけではありません。
少ない体力を使ってまで病院へ行くよりは、暖かくして寝ていた方がいいと思います。
ただし、
経口摂取できないくらい嘔吐している人
→嘔気止めの点滴、点滴で脱水補正ができる
高齢者、小児(特に乳幼児)
→脱水に対する余力がないので、早期に脱水補正が必要
なのでこうした場合は病院へ行って対処してもらってください。
つまり「飲めるか否か」が病院に行く意味があるかどうかの分かれ目になるので、参考にしてください。