ここ数年オンライン診療が盛り上がりつつありましたが、コロナ禍で一気に加速した感があります。
病院には行かなければいけないけど、コロナ患者がいたら怖い、といった患者層の需要をうまく取り込んで少しずつ伸びていますね。一方で画面越しは不安、という声も聞かれます。
今回はオンライン診療を半年くらいやってみた医師目線の感想をメリット、デメリットに分けて書いてみます。
メリット
受診コンプライアンスが保ちやすい
通常病院に通院している場合、
予約を取って
時間までにいって
場合によっては少し待たされて
薬をもらって
など移動時間も含めるとそれなりの時間がかかります。
働いていたり、子育てをしているなどで時間的余裕がないと、ついつい通院を後回しにしてしまい、薬が切れてしまった、という経験はないでしょうか。
そうした方には出先で、スマホなどの通信環境さえ用意できれば簡単に受診でき決済もクレジットで済、薬が送られてくるというシステムは非常にありがたいものでしょう。
受診控えを控えられる
昨今のコロナ禍においてはこれが最も大きなメリットでしょうか。
もともとインフルエンザの流行期などもあったのですが、今回のコロナ禍での受診控えは相当なものです。
正確なデータは出ていませんが、日本においてはコロナによる受診控えで受診機会を失ったことで他疾患が悪化し、予後に影響する方が、コロナによる死亡数より多いのではないかとさえ言われています。
そんな中、処方のみの時やちょっと医師に相談したいことがあるときなどは、オンライン診療を利用すれば、他の患者と待合室で一緒になることなく受診ができるので、そうした方はぜひ利用していただければと思っています。
デメリット
得られる情報が少ない
初診はほぼ0から患者さんの情報を集める作業です。
検査データはもちろんですが、性格や所作なども見ています。
例えば高血圧症だったら、他の基礎疾患・血圧推移・体重・運動・食事等など様々な要素をもとに治療方針を決めていくことになります。
しかし医学と医療は違い、すべての患者さんに教科書通りの治療ができるわけではありません。
理想は運動・食事療法が先だけど、それだけでは難しそうだから少量の降圧薬を併用しながら成果を見える形にして始めてもらおうとか、複数回の内服が理想だけどコンプライアンス維持が難しい仕事だから1日1回の薬にしよう、などといった調整を行います。
こういった微調整は面と向かってみないとわからなかったりするため、初めての医師にかかるときは対面のほうがいいといえるでしょう。
触診はもちろん視診は事実上不可能
たまに湿疹や腹痛でオンライン受診をされるかたがいますが、正直正確な診断は不可能です。
これまでもニキビ治療やアトピー治療で通院している方であれば、本人から病勢をうかがって薬剤を調整できますが、初発の皮疹や腹痛等の病状は実際に診てみないと正確な診断を下すのは非常に難しいです。
結論
以上より個人的にはオンライン診療は
・初診はおすすめしない。
・継続的に通院しており、主治医が「次回はオンラインでOK」といっているなら有用。
・コロナ等が心配で受診控えになるくらいなら、診断のクオリティが下がることは承知で利用し、受診するように言われた必ず対面受診に移行する。
といった点を守れば非常に有用なシステムだとは思います。
今後5Gの普及でよりクリアな映像が安定して通信可能になると、局面が変わってくる可能性はあり、期待したいです。